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スポーツ

イチロー選手の隠れた記録
弁護士 川 人  博
(世界週報2004年12月21日号掲載)


 今シーズン、マリナーズのイチロー選手は、メジャーリーグの年間安打記録257を84年ぶりに更新する262安打を打ち、かつ2回目の首位打者を獲得した。この快挙達成へ向けての道程の中で、日本人、シアトル市民をはじめアメリカ人の多くのファンがイチロー選手の一打席一打席に熱中したことは記憶に新しい。
 しかし、他方では、イチロー選手の評価を下げようという試みも行われており、その一つに、「イチローは四球が少なく打率の割には出塁率が低い」との批判がある。今年イチロー選手は、ア・リーグで打率が断然トップだったが、出塁率が2位だった。「1番打者は塁に出るのが仕事なのだから、打率や安打数のみで過大評価してはいけない」とのもっともらしい批判もなされている。
 私は、こうした批判・批評を耳にするにつけ、弁護士の習性が現れてきて、イチロー選手の援護をより説得的に行いたいと思うようになった。ここでは、内野ゴロエラーによる出塁の意義にについて論じたい。

 内野ゴロ失出塁に正当な評価を
 バッターが塁に出るのは、安打、四死球だけでない。守備側のエラーによる出塁も少なくない。ところが、あるバッターがエラーで出塁しても、打撃記録上は、凡打したのと同じ扱いとなる。多分、守備側の失敗で「たまたま」出塁しただけなのだから、打者の評価を上げることにつながらないということなのだろう。
 しかし、イチロー選手は、今シーズンを通じて15回も内野ゴロエラーで出塁している(ホームページ=HPにより全試合分を一つ一つ数えた)。この回数はおそらくメジャーリーグの中でもトップクラスの数字と思われる。彼の場合は、内野にゴロが転がった時点で、内野手が俊足を警戒して、早くボールを取って投げようと焦り、その結果ミスをしてしまうのである。
 このように打者の能力が守備側のミスを誘発するという点では、四球と同じである。打者が強打者に打たれまいと警戒してボールを投げてしまうのと、内野手が焦ってエラーをするのは、共通面が多い。
 ところが、打撃記録上では、全く違う扱いとなる。出塁率=(安打+四死球)/(打数+四死球+犠飛)の算式で計算され、四球は、積極評価になり、内野ゴロエラー出塁は何らの積極評価を与えられない。野球記録に関して実に詳しく分析をしているメジャーリーグなのに、内野ゴロエラーは、凡打と同じ扱いなのである。
 今シーズン、ア・リーグで出塁が一位だったのは、モーラ選手(オリオールズ)だった。同選手の打率は3割4分0厘で、イチロー選手(3割7分2厘)に次いで2位だったが、四球が多かったぶんだけ出塁率が高くなり、モーラ選手(4割1分9厘)の方がイチロー選手(4割1分4厘)より出塁率がわずかに上回った。
 このモーラ選手の内野ゴロエラー出塁を、HPで全試合数数えてみると、今シーズンを通してわずか2回だった。ここで、内野ゴロエラー出塁数を、出塁率の分母に加えると、イチロー選手の出塁率は4割3分4厘となり、モーラ選手の出塁率は4割2分2厘となり、イチロー選手の方がだいぶ上になるのである。
 また、仮にイチロー選手の内野ゴロエラー出塁15回を、ヒットと評価して打率を計算すると3割9分4厘となり、四球と同じように打数から除いて計算すると3割8分0厘となる。4割打者が目前となる数字である(なお、レギュラー選手平均で内野ゴロエラー出塁数がどの程度の回数になるのかは、算出に膨大な時間を要するために、現時点で把握していないが、おそらく年3〜5回というのがレギュラー選手の平均的な数値と思われる)。

表 イチロー選手とモーラ選手の打撃成績の比較
  打 数 安 打 四死球 内野ゴロ失出塁 打 率 出塁率 修正出塁率
イチロー 704 262 49 15 0.372 0.414 0.434
モーラ 550 187 66 2 0.340 0.419 0.422
*基本データは、メジャーリーグ機構のHPによる。
*内野ゴロ失出塁は、メジャーリーグのHPとスポーツ報知のHPに基づく。
 スポーツ報知のHPでは、イチロー選手の内野失出塁は16回だが、うち1回は野選(フィルダースチョイス)と思われるので、ここでは15回とした。
*修正出塁率の計算方法は、本文参照。


 データ収集・分析の改善を
 イチロー選手の安打記録更新は、メジャーリーグのはるか過去の記録にスポットを当てたという意味でも話題になった。過去の記録との比較だけでなく、イチロー選手の活躍を正当に評価するには、従来の固定観念にとらわれない数字の的確な分析をすることが求められている。
 今年繰り返しイチロー選手の活躍が報道されたにもかかわらず、内野ゴロエラー出塁に関する報道と評論は、私の知る限りほとんどなかった。そもそも、データとして、その回数が記録集に整理されていない。本稿では、私の方で野球好きの学生の助力も得て、全試合の打席を一つ一つチェックするという作業を行った。本来であれば、メジャーリーグ機構かマリナーズ球団が重要記録として集計しておいてほしいところである。あるいは、日本の報道機関は、イチロー選手の全試合を連日報道しているのであるから、ぜひ内野ゴロエラー出塁についても記録を整理していただくようお願いしたい。
 イチロー選手は、守備面でも、例えば、ランナー一塁の時ライト前ヒットが出た場合に、巧妙に打球を処理した上で強肩を生かしてランナーを二塁で封殺するというプレーを行う。この見事なプレーも記録上きちっと残されていない。
 関係者のご努力を得て、2005年のシーズンには、新たな視点とデータをもって、イチロー選手の活躍を応援したいと思う。